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どうしようもないゴミクズだけど、そんな自分を自分だけでも愛したい。

昨日の続き。

あれから、風俗求人にはダミーがあるということを学んだ私は慎重に次のお店を探した。
今度はなるべくきちんとしていそうなお店を選ぶことにした。そういった話をAちゃんに相談し、「ここへ行ってくる」と告げると、心配してくれて付いてきてくれることになった。私よりもこの世界をよく知っているとのことで心強かった。

駅前でお店に電話をして迎えに来てもらうのを待った。友人と一緒にスーツのおじさんのあとを歩きながら、雑居ビルの上の方へ案内された。前回のお店よりかは暗い雰囲気ではなかった。奥の方に通され、ソファーに腰掛ける。身分証明書を出しつつ、色々記入したのち、簡単に首から下の写真を撮られた。
オナクラのつもりでお店に行ったはずだったが、残念なことに今回もダミー求人に騙されてしまった。それもデリヘルだ。私は冷や汗が止まらなかった。
その日は体験入店という形で強制的に働かされてしまった。友人は帰っても大丈夫なはずだったが、私を1人にはできまいと自ら残ることを選んでしまった。本当に申し訳ないことをさせたと思う。
前のお店とシステムはほとんど同じだった。荷物も同じ。簡単に説明されてホテルへ向かった。

1人目の客は60手前といったところだろうか。白髪の量も多く、大分歳がいったサラリーマンだった。優しそうな紳士風といったところだろうか、こんな人がこんなお店に?と動揺が隠せなかった。
特に問題もなくサービスを終えたあと、さっきまでとおじさんの態度がどうも違っていて大分テンションが低かったので、私は(何か不快にさせてしまっただろうか…)ととても不安な気持ちにさせられた。
私は機嫌を直してもらうために身体を洗ってあげようとしたが、おじさんはさっさと洗って出ていってしまった。スーツも素早く着て、部屋を出て我々はエレベータに乗った。
「あの…ハズレですみません」
私は思わず自暴自棄になってそんな言葉を投げかけた。その時おじさんは「君はまだ若いね」と返して、ホテルから出て逆方向へ歩いていった。
突然涙が溢れ出て止まらなくなってしまい、お店に戻ってから店員に「私が下手糞で不満足げな顔をしてた」と泣きながらうったえた。後から考えれば、男の人は射精後ああいうものなのだということをすっかり忘れていた。特別私に非があったというわけではなかったけれど、当時男性経験が非常に少なく自分から何かすることなんて無に等しかった故に、自分の仕事のできなさにとにかく情けなくなってしまったのだ。

私はワンワン泣いて、「私にはこの仕事はできません」と言うも、店員は「君は真面目だね、大丈夫だよ。うん。じゃ、次の人のとこ行ってくれる?」と言いバッグを渡した。
私は「はい」と答え、渋々また同じホテルへ向かった。

2人目の客は30代なかばのサラリーマンだった。どこにでもいそうな、中肉中背の男だ。
体験入店で入ってきた新人ホヤホヤということもあって、舐めてかかってきた男は「ヤラせろヤラせろ」としつこく迫ってきた。お店のルール上それは違反だし、そうでなくとも御免こうむる。私はごめんなさいお店の人に怒られるんですと断った。
すると男は急に機嫌が悪くなり、テレビを付けて横になってタバコをふかし始めた。こちらから身体を触っても拒否されてしまう。しかしこれではお金をもらっているのに仕事としてよくない。「ごめんなさい、何してもいいから」と謝るけれども、男は「帰って」と目も合わせずにそう言った。
私は服を着て、アンケートの紙を置いて部屋を出た。
お店に戻ってきた瞬間、何故かぶわっと涙が溢れてしまった。事情を店員に説明すると、「逆に何もせずお金がもらえたんだから、ラッキーと思わなきゃ」と言われた。私は心底この仕事が向いていないなと感じた。普通は喜ぶのか…。
そして丁度Aちゃんも戻ってきた。

A「あたし、客にアナル舐めてって言われて、マジ最悪だった…身体触られるよりマシだったけど」

私「(この世界は狂ってる…)」

私たちは1.6万円を受け取って、帰った。


その後、Aちゃんとどこか買い物しに行ったかもしれないし、お茶をしたかもしれないし、何もせず帰ったかもしれない。残念ながら何も覚えていない。
ただ今でも鮮明に覚えていることがある。
帰りの電車の中、暗そうな表情で電車の中で座っているサラリーマンたち。吊革につかまっているサラリーマンたち。黒尽くめのサラリーマンたち。どこにでもいそうなサラリーマンたち。私の父みたいなサラリーマンたち。おじさんたち。おじいさんたち。おとこたち。こいつらは昼間も夕方も夜も風俗の姉ちゃんと裸で抱き合って、舐めたり腰振ったりしてるんだ。独身の人もいれば、家庭を持ってる人もいる。目の前に座ってるサラリーマンたちもさっき風俗で抜いてきたのかもしれない。
そして自分はそのきもちわるい男を抜いてきたんだ。
これが、普通のことなのだろうか………。


その後も1件か2件、風俗店で体験入店をすることで、お金を無事返すことができた。
あの当時は「こんなことしてまで稼いだ金をお前は平気で受け取れんのかよ!テメー!」と知人に対して思ったもんだけれど、知人は知人でそうとう家庭環境が大変で家族を養いながら大学のお金も稼いで、ときには穴を売ってまでして生き抜いていたらしい。
それを後々知った時は、自分なんか風俗で稼ぐ必要性はそこまで無かったはずで、別に日雇いだったらなんでもよかった。楽を求めて自分から泥沼に飛び落ちただけだった。
自業自得とはまさにこのこと。自分が情けなくなったし、恥ずかしくなった。
失ったものは多いし大きいが、そこまでしないと大切なことに気付けなかったのもまた事実である。私は自分のことを過大評価しすぎていたし、世の中を舐めていたし、他人を馬鹿にしていたし、社会のことも全然知らなかった。
人は後悔をする生き物だけれど、私は自分の人生の中で後悔する出来事はそんなにない。当然、風俗の件も後悔はしていない。バカだったなぁとは思うけど、今の自分があるのも当時の失態のおかげだというふうに考えている。あの時痛みを感じないでいたら、「ありがとう」が言えない大人になってしまっていたかもしれないし、もっと辛い目にあっていたかもしれない。

こうやって書いてると、さぞかし今はご立派なんですねとでも言いたくなる雰囲気に思えたけど、多分そこまで変わってはいないと思うし、かえってダメなところも増えたかもしれない。
たまたま昔よりも落ち着いたってだけで、あんまり人と関わらなくなったってだけで、問題が生じないのはそういう場に直面する機会を避けているだけなのだと思う。
本当に「ありがとう」が言えるようになったのかな?という疑問もある。


ちょっと話は変わるけど、先日の面接でこういうことを言われた。

「あなたは自分が好きな人なんだと思いますよ。自分のだめなところもひっくるめて愛せるタイプなんだと思います。」

私は今まで「もっと自信を持とう」と言われることがとても多かった。自信がないことは確かだった。
けれども、こういう風に「自分のことを愛せる人だ」と言われるのは恐らく人生で初めてだった。そういう風に見られたことに驚いたし、動揺した。
私は今の自分自身に全くもって満足も納得もできないけれど、過去の自分に対しては全面的に許しているつもりである。だから過去を否定はしないし後悔もしない。

"愛"っていうのは、ものすごく複雑で難しい感情なんだ。
好き好き大好き、というのが必ずしも愛ではない。
多分、「ダメなところはあるし、憎いところもあるけれど、それでも一緒にいたい」というのが愛なのだと思う。

私は自分のダメなところや憎いところがたくさんあるけれど、そういうところがあるから私なのだろう。
暗いし、消極的なくせに、へんに行動力があって、目立ちたがりで、それで失敗してしまう、そんな自分が一番自分らしいのだろう。
そう考えている。

自分のことが嫌いなみんなも、自分のことを愛してあげてください。


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