孤独の人

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夜の東京が好き。というのは、もう何度も言ったかと思います。でもそれくらい私は夜の、特にほとんど人が出歩いていない(皆帰るべき場所に帰ってしまった)時間帯の東京が好きです。
眠らない街なんて存在しない、眠らないのは人間であって街そのものではないんだということが自分の目で耳で空気でよくわかります。
特に神田駅を降りて、道を誤って銀座の方面まで歩いてしまった23時過ぎの日のことは今でも思い出深く記憶に残っています。
街灯がキラキラとしていて、星なんかひとつも見えないスモークみたいな暗い空。ビルの窓の明かりは消えていて、時折歩くサラリーマンのカツンカツンという音が優しい風とともに響き渡る。

自分の生まれ故郷、住んでるこの土地を何度も何度も抜け出したがるのは私の非常に悪い癖であることは自覚しています。でもここにずっと居続けることが、私にとっては恐怖なんです。それは退屈と不安との隣り合わせ。
結局昨日も私は今の暮らしが続く(あるいはもっと悪い暮らしになる)ことが恐ろしくて、夜目を瞑って眠ろうとすると怖くて怖くて頭がどうにかしてしまいそうになって、助けを求めるようにしてカッターを手に取り、私は自分の首を何回も切りました。
刃は古くなっていたのか全く切れず。でも人は死に執着するととても冷静になります。刃を研ぎました。そして鏡で位置を確認して、指で皮膚をピンと張るようにおさえて、刃をスライドさせました。
幸いそれはかすり傷程度の薄い傷ですみました。私は死にたいなんてほんのわずかすらも抱いていなかったのですから。死にたい人は死ねばいい。死にたくないなら死ななければいい。私は生きたいから生きたい。それでも生きているのがつらくて、狂ってしまう夜があるんです。

退屈に負けたくないという気持ち。つまらないことをしたくないという気持ちが次第に強くなりました。
女らしくなるために、男の人に愛されてみるために伸ばし始めたこの髪も、1年でだいぶ伸びました。鎖骨より下まであるし、ポニーテールもちゃんとできます。でもそれだけ。なんて退屈でつまらないんだと呆れてしまった。昨日。
そういうわけで最近見つけた可愛いチャイナガールの髪型をそっくり真似てみようか、今日はずっとそのことばかり考えて、友達に「どうかな似合うと思う?」なんて聞いてみたりしている。わかるわけないですね。
いくらこんな大胆になりたがってても、似合わない髪型にする勇気はない。理性が働いてリスクを考えてしまう。それって別に賢いことじゃないんです。つまらないだけなんですよね。




あそこ…読売ランド前駅最寄りで部屋を借りたい。
ほとんど山みたいに坂がすごくて、でも上の方からはすごく眺めがとっても良くて気持ちいいんです。昔好きになった男の子がそこに住んでて、景色が良くって気に入ってしまったんです。家賃も安いし、町田もすぐ近くにあるし、快速に乗り換えれば新宿だってそう遠くはないし。

ずっとここにいるのは辛すぎる。引越し資金のために少ない収入から毎月お金を貯めてる。たった2万。たった2万だけど、1年貯めれば24万にはなるでしょ?2年貯めればもっと。。余裕があればもう少し貯蓄額増やしてもいいし。(ちなみに100万を超えてから初めて「貯蓄」と呼ぶらしいです)

これでも私は健康を尊いものだと考えているし、母も父も大事だと思っているし犬は私の宝だし友達は財産だと思っている。
私のこと何も知らない人、知ろうとすらしない人は、私の顔見て「怖い」だとか「病気」だとか言うけど、本当は優しくて愛嬌のある顔なんだよ。
怖くて病んだ顔に見えるのは、あなた方が私をそういう人だと思いたいだけなのではないのでしょうか?

妄想日記

アパートのすぐ真横。あるいて20m先に、太った黒人女性(髪はアフロみたい)が座りながらゲスな新聞を読んでいる、小汚い雑な陳列がされた小さな個人売店がある。

ミルクと、プレーンのベーグルを4つ。それからレーズンバターと缶に入ったポタージュ2つ。ああコーンフレークも無いと死んじゃう。

ここの店員、すごくぶっきらぼうだけどあたしは好き。だってあたしを子供と間違えてキャンディーを入れてくれるの。ほんとはやさしいんだあ。

アパートの部屋は一階がキッチンとダイニングで、2階にお風呂とトイレと寝室がある。ちょっと横幅が狭いこの間取りだけどあたしは気に入ってる。ケンと住んでんの。かーあいい男の子よ。歳はあたしより3つ上だけどね。

男と住んでるって話すと(いや、正確には聞かれたから答えただけ)、みんな驚くのよ。「付き合ってるの?」「内縁の夫?」って。だからあたしはいつも「男の女が同じ屋根の下で暮らしちゃいけないわけ?あんたたちだってパパと一緒に寝たりお風呂に入ったりしてたでしょ」とこたえるわけよ。ケンはパパじゃないからキスくらいするけど。

彼はあたしが外で誰とどこでナニしてんのかは知らないし、彼もそれは同じ。外ではあたしたち他人同士だから。

でもそんな生活もいつまで続くのかはわからない。こないだ、赤ちゃん連れて歩いてる夫婦見て、つい「イイナァ」なんて口からこぼしちゃった。あれには自分でも驚いた。まさか、いや、そんな、でも、…‥まさかね。

大人になるってこーゆーことなのでしょうか?神様、教えてください。

この生活を愛していたのに……………

 

 

ケンはマリエにプロポーズするためにどうするべきか(どう動くべきか)を友人たちに相談していた。共同生活が始まって4年目が経った頃である。

「そりゃ、わかっちゃいるさ。わかっちゃいるけど、彼女がずっとあのままで生きていくなんてあまりにも不幸だ。」

現実逃避以外のセックスやアルコールを知らない彼女を僕はもうこれ以上見ていられなかった。でも彼女は愛を拒む。だから僕は愛していないふりを続けてきた。キスをしても舌を入れることは絶対に(しなかった)。

花束や指輪やドレスが全てだとは思わないけれど、この生活が愛であった、愛であることを受け入れてほしい。僕は勝手なんだろうか?でも、だって、愛していない男のために、女がキスをしたり髪を乾かしたり、パンケーキを焼いてくれたり靴を磨いたりしてくれるのだろうか?

愛してもいない男の靴を…

 

3日後

 

仕事からケンが帰宅した。

右腕には花束をかかえて、左手にはドレスと指輪の入った紙袋をぶらさげている。

二階の浴室からはシャワーの音が響いていた。もう21時か。

「マリエ!いいものがあるんだよ!降りてきてご覧!」

「マリエ?聞こえないのか?今からそっちに行くよ!」

 

浴室には出しっぱなしにされたシャワー。

洗濯物の上には小さなメモ用紙が置かれていた。

「愛しい人よさようなら ごめんなさい」

つまらない男

「幸せになりたアい」
女の子が眉毛をハの字にしてそう言った。彼女はベッドで半裸になって寝そべっている。

「どうしたら幸せになれると思うの?」
僕は聞いてみた。幸せっていうのは、それを得るための手段なんてものは存在しなくて、今この状況をどう受け止めることができるか(幸か、あるいは不幸か、)であって、幸せって”なりたい”からなれるものじゃあないんだと思うんだけど、君はどう思うんだろーか。

「そうだなぁ」伏し目がちに彼女が答える。
「退屈なのよ。つまんないのよ。毎日が毎日が。でもだからって刺激が欲しいとはちっとも思わない。ハクバのおーじ様が来て欲しいとも思ってない。例えばさ、友達にクラブに無理やり連れて来させられて、あたしはクラブなんて大嫌いなの、みんなバカみたいに大きな音に酔って下品な服着て踊り狂って、小さな箱にいなきゃ大胆になれないなんて路上でゲロ吐いてるサラリーマンよりつまんないなぁって。」

「あたしは隅っこでしゃがんでコーラを飲んでんの。ボケーっと知性を失った人間たちを眺めて。するとそんな退屈そうにしているあたしに1人の男の子が声をかけてくるのよ、それおいしい?って。途端に世界が変わるのよ。あたしと彼だけの世界が生まれんの。向こうはマンモスを捕まえてみんなで喜んで火を焚いて嬉しそうにお肉を食うために群がってる原始人たちだけど、あたしたちは木陰の下の草むらに座り込んでるの。きれーよ。でもここには木も生えてないし草むらもない。うるさい音と狭い壁と天井とギラギラとした光。そうすると、外が恋しくなるじゃない?だから、あたしが息苦しそうにしてると、彼が『新鮮な空気を吸いに行こうよ』ってあたしの腕を引っ張ってエレベーターまでまっすぐ連れて行くの。」

「うん」僕は話を聞き続けた。

「退屈から抜け出したいのよ。つまりは。でも待ってるだけじゃダメなのよね。わかってるの。わかりたくないけどね。」

「退屈は不幸なこと?」

「不幸よ。退屈な時間が多ければ多いほど、例えばお母さんがいつ死んじゃうのかとか、死んだらあたしはどうなっちゃうのかとか、今月の生活費は大丈夫かしらとか、どうしていつも同じタイミングで必需品を買い足さなくちゃいけないのかとか、大事なペットの老後の心配とか、余計なことばかり考えるのよ。それであたし、ドラッグとアルコールをするしかなくなるんだわ。」

確かに彼女のベッドの横にあるサイドテーブルには、ウォッカとお水と、瓶の中に数種類の薬が大量に詰められている。

「…あなたはいつも黙ってそこにいるだけなのね」

「僕は君を愛しているし、いつも花も送っているし、欲しいものも買い与えている。」
それでも君は退屈で仕方ないのか?という言葉を僕は飲み込んだ。




「………あなたってつまんない人だわ。」

男の左手薬指にはめられた指輪のダイヤが綺麗に輝いていた。男の熱いまなざしよりも。

つまらない男に恋をして (角川文庫)

つまらない男に恋をして (角川文庫)

ゼクシィのメディアで連載始めました

zexy-enmusubi.net
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男の人が読んでも笑えるように頑張ります。笑えるは違うな、学びになるように頑張ります。読んでね。


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